細胞環境デザイン学は「遺伝=運命」の常識を覆す

人間の運命
体格や性格、病気とかって
ほぼ全て遺伝なんじゃないの❓
このような疑問はございませんか?
この記事では
・エピジェネティクスについて
・遺伝子発現の有無を左右する環境
・環境こそが我々の運命を左右する理由
これについて解説しています。

Dr.和貴
今日は杏林予防医学研究所
細胞環境デザイン学の認定医であり
2級ファスティングマイスターの僕が
細胞環境とエピジェネティクスを解説❗️
我々の人生や運命は
遺伝子で決まるのではなく環境で決まります。
細胞をどのような環境に置いてやるか
それにより運命も変化するのです。
今あなたが何らかの悩みや病に悩んでいるのであれば
細胞の環境を変化させる事で
より良い方向へと改善させる事が可能となるでしょう。

細胞環境デザイン学とエピジェネティック

遺伝

うちの家は癌家系だからな・・・
私太りやすい体質なのよね・・・
自分の運命をこのように
「遺伝だから、体質だから仕方ない」
このように決めつけてしまう方は
多いのではないでしょうか。
世の中の多くの方が
遺伝には逆らえない
このように考える方が多いと僕は感じます。
しかし
我々の運命というのは遺伝で決まるのではなく
エピジェネティックなアプローチを講じることにより
良くも悪くも変化させる事が可能なのです。
すなわち
環境は「遺伝=運命」の常識を覆す
ということ。
ではその真実を1つずつ
紐解いていきましょう。

1、エピジェネティクスとは?

ヒトの体を構成する約60兆個の細胞は
その1つ1つを取り巻く環境によって
コントロールされており、
遺伝子というのは実はごくわずかしか関与していません。
どういうことかと言うと
イメージして頂きたいのが家を建てる時の建築作業。
家を建てる時にまず用意するのは
「設計図」です。
そして、その設計図を元に腕の良い大工さんや
質の良い木を用いて家を建てることで
素晴らしい家が出来上がります。
しかし、腕の悪い大工さんや質の悪い木を使えば
いくら設計図がよくても、素晴らしい家はできません。
これを細胞に置き換えて考えるとこうなります。
遺伝子というのは1つの細胞を作る際の
「設計図」
そして、その設計図をもとに細胞を作っていくための
「材料や大工さん」となるのが
種々の細胞環境なのです。
優れた材料もあれば質の悪い材料もあるように
細胞環境の良し悪しが
細胞の出来栄えを決めるということです。
そんな細胞環境のあり方に注目した新しい学問が
エピジェネティクス
後成遺伝学
エピジェネティクスを簡単に
一言で言い表すとするならば
遺伝的な要因は生まれた時のままではなく、生まれた後でも色々なものから影響を受け、良くも悪くも変化しうる。
ということ。
この事実に目を向け
そのメカニズムについて研究する学問こそが
エピジェネティクス(構成遺伝学)なのです。

2、遺伝子の発現・不活化という事業仕分け

ではここで少し「幹細胞」を例にとって
エピジェネティクスの概念を説明していきたいと思います。
幹細胞
幹細胞とは、まさに木の幹から枝や葉っぱが伸びていくように、我々の体を構成する様々な種類の細胞へと変化していく能力(多分化能)と細胞分裂を何度も繰り返してもこのような多分化能を維持する能力(自己複製能)をあわせ持った細胞のこと。
幹細胞というのものは
体内の様々な組織や器官に存在しています。
例えば、
骨髄にある造血幹細胞は赤血球や白血球といった
様々な血球の元になる細胞です。
しかし、それらの造血幹細胞から
皮膚や骨などの細胞が作られることはありません。
では、なぜ造血幹細胞から
血球以外の細胞が作られないのでしょうか。
それは、造血幹細胞の場合
造血に関係のない遺伝情報については
ふたが閉じられ、造血だけに専念するよう
指示されているのです。
要するに
事業仕分け
が行われているのです。
このように
必要な情報だけを細胞に伝える
→遺伝子発現(脱メチル化)
不要な遺伝情報はふたを閉じておく
→遺伝子不活化(メチル化)
遺伝情報の何が読み出され
何が読み出されないかを制御する
DNAのメチル化/脱メチル化
・ヒストンのアセチル化/脱アセチル化
といった事象がこれにあたります。

3、スイッチの入る環境「時・所・場合」が重要

例えば
DNAのメチル化は「時・所・場所」に応じて
DNAのスイッチをOFFにしておくもの。
逆にONにするのが脱メチル化と考えれば良いでしょう。

DNAのメチル化

→DNAスイッチOFF
DNAの脱メチル化
→DNAスイッチON
このように、全身のいかなる種類の細胞でも
DNA配列は全て共通していますが
どのDNAがどのタイミングで
ON/OFFになっているかによって
その細胞に伝わる遺伝情報がコントロールされ
体の部位ごとに
「事業仕分け」が行われるということです。
結局、我々の体は
このような遺伝情報のスイッチの
ON/OFFが性格かつ迅速に行われることによって
成り立っているということです。
DNAはアデニン、グアニン、チミン、シトシンなどの塩基で構成されているがヒトを含めた脊椎動物では、このうちのシトシンがメチル化されることにより遺伝子発現をコントロールしているといわれています。
ところが、何らかの要因で
DNAのメチル化が適切に行われないと
その細胞では遺伝情報が混乱し
細胞としての機能を担う事ができなくなります。
メチル化の「時・所・場所」(環境)の
どれか1つでも不適切であればそれはすなわち
異常事態に直結することを意味するのです。
エピジェネティクスの分野では
こういったDNAのメチル化などが
後天的な影響を受けることにより、
我々の健康にどのような
メリットやデメリットが生じるかという事が
研究されているのです。

食事が影響を及ぼした「マウス」

ではここで、遺伝情報は全く同じであっても
DNAのメチル化がされるかされないかによって
外見も中身もまたくちがった個体になるという
研究を紹介したいと思います。
これは米国の学術誌
「Molecular and Cellular Biology」
2003年8月号に記載された内容です。
この研究は妊娠中のマウスに特定の栄養素や物質を追加して与えるだけで生まれてくるマウスの毛の色が変わり病気にかかりにくくなたとする米デューク大学の報告です。
この研究では全く同じ遺伝子を持つアグーチマウスを対象に行われました。
マウスの中には
遺伝子の余分なDNA断片を有することによって
毛の色が黄色く肥満体になってしまう種類
(アグーチ遺伝子保有マウス)が存在します。
研究では、妊娠中のアグーチマウスに対し
ビタミンB12、葉酸、コリン、ベタイン
これらを強化した餌を与えました。
これらの栄養素や物質は全て
メチル基を有するのも(メチル基供与体)であり
DNAのメチル化において重要なものであります。
その結果はこちら
強化餌のアグーチマウス
強化餌のアグーチマウスでは褐色が優位の体毛で普通体型の子供を出産しました。
さらに驚くべきことはこのアグーチマウスは肥満だけでなく糖尿病や癌などの病気にかかりにくいという体質も兼ね備えていました。
これとは対照的に
通常餌のアグーチマウス
通常の餌の母親から生まれたアグーチマウスは体毛が黄色がかっており肥満体でした。
しかも、糖尿病や癌に罹患しやすいことも分かっています。
結局この研究結果より得られた事実というのは
特定の栄養素を補給するという方法が
遺伝子配列自体を操作するのではなく
遺伝子の発現スイッチを
コントロールすることによって
子孫の外見や健康状態に
多大な影響を及ぼすということ。
遺伝子発現には環境要因
エピジェネティクスな要因が
密接に関与していることが実証されたのです。

環境が影響を及ぼした「ミツバチ」

では次に、ミツバチの育った環境が
遺伝子に影響を及ぼしたとする
研究を紹介したいと思います。

この研究は米イリノイ大学の研究で研究対象となったのは、気性が穏やかな種類のミツバチ(タリアミツバチ)と集団で人を襲うこともある獰猛な種類のミツバチ(アフリカナイズドミツバチ)です。

研究チームはそれぞれの幼虫の孵化1日目で互いのミツバチの巣に移しそれぞれの幼虫がどのような性格のハチに成長するかを調査しました。

すると、
孵化直後であれば別種の幼虫であっても
攻撃を受けることなく、それぞれの巣で受け入れられ
同種の幼虫と同じように育てられたのです。
さらに驚くべきことは
ミツバチの性格の変化
獰猛ミツバチに育てられたミツバチ
獰猛ミツバチの巣で育てられた温厚ミツバチの幼虫は、攻撃的なハチに成長したのです。
温厚ミツバチに育てられたミツバチ
温厚ミツバチの巣で育てられた獰猛ミツバチの幼虫は、穏やかなハチに成長したのです。
すなわち、この研究でもやはり
遺伝子配列は変化することなく
エピジェネティクスな要因により温厚な家系の子供が
攻撃的な家系の里親のせいで
獰猛になるといったように
遺伝子のスイッチが切り替わったと
考えられるのです。

細胞環境デザイン学は「遺伝=運命」の常識を覆す

遺伝情報の何が読み出され何が読み出されないかという遺伝子発現の制御のメカニズムは

フランソワ・ジャコブジャック・モノーという2人のフランス人科学者によって発見されました。

 

そして彼らはこの発見により、1965年にノーベル生理学物理学賞を受賞しました。

 

(フランソワ・ジャコブ)
(ジャック・モノー)
今までの人生であなたは自分の運命を
「遺伝だから、体質だから仕方ない」
このように
遺伝を理由にした事はないでしょうか?
しかし、これまで述べてきたように
遺伝子というものは
後天的にいくらでも変異しうるものなのです。
近年では
DNAレベルでのゲノム治療が注目を集めています。
しかし、エピジェネティクスな要因
(細胞環境)を常に考慮しなければ
いくらDNAレベルで治療を行ったとしても
同じ問題が何度も再燃するのです。
この記事で僕が最も伝えたいこと
それは
自分の運命というものは遺伝子レベルで決まるのではなく、
エピジェネティックなアプローチを講じて細胞の環境を整えることにより自分の運命は決まるということ。
自分の運命は
自分自身でコントロールできる
我々がやるべき事は
細胞の環境を整えてやることであり
それさえ行えば
後は勝手に細胞たちがやるべきことを考え
最も効率の良い方法で問題を解決に導いてくれる。
これこそが
細胞環境デザイン学の基本的な概念なのです。
参考文献
・杏林予防医学研究所(杏林アカデミー講義テキスト)
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