ファスティングのメカニズムを医学的に解説【ノーベル賞受賞】

ファスティングって何も食べないんでしょ❓
断食中のエネルギーはどこから作られるの❓
このような疑問はありませんか?
この記事では
・ファスティングのメカニズム
・ファスティング中の主なエネルギー源
・ファスティング中の生体反応
これらを理解する事ができます。

Dr.和貴
今日は細胞環境デザイン学認定医
2級ファスティングマイスターであり
自身でも断食を実践している僕が
そのメカニズムを医学的に解説します❗️
人間は昔から長らく飢餓との戦いが続いていました。
なので人間の体は飢餓状態においても
長らく生き抜く生命力を備えています。
人間は飢餓状態に陥ると、どのようなメカニズムで
エネルギー源つくり出すのか。
この記事でその機序を学びましょう。

ファスティングのメカニズムを解説

僕がファスティングを勧めると
このような言葉がよく返ってきます。

ファスティングって何にも食べないんですよね❓
私には絶対無理です❗️
しかし、結論を先に述べると
正しくファスティングを行えば、あまりお腹も空きませんし
辛さもさほどありません。
むしろ気分は快適。
ではそのメカニズムを今から説明していきましょう。

断食中にエネルギーがつくられるメカニズム

私たちが普段
活動するために使っているエネルギー源は
食事から摂取するブドウ糖
しかし、
ファスティングを始めると、
何も食べないので食事からブドウ糖を作る事ができません。
では体はどのようにして
エネルギーを確保するのでしょうか?
ファスティング中におけるエネルギー確保の方法を
時間経過とともに見ていきます。
ステップ1:断食後約24時間
肝臓に貯蔵されたグリコーゲンを使う
ファスティングを始めて最初の24時間は
ブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されており
まずはそのストックが優先的に利用されます。
(貯蔵グリコーゲンは500Kcal程度)
ステップ2:断食後約1日
肝臓内に貯蔵されたアミノ酸を使う
肝臓に貯蔵されたグリコーゲンのストックが無くなると
次に肝臓に貯蔵されたアミノ酸(タンパク質)
を原料にしてブドウ糖を作ります
ステップ3:断食後約2日
筋肉に貯蔵されたアミノ酸を使う
肝臓に貯蔵されたアミノ酸が無くなると次は
筋肉に貯蔵しているアミノ酸を分解し、
それを肝臓に送り込んでブドウ糖を作ります。
ステップ4:断食後約3日
脂肪を分解してブドウ糖を作る
ここからようやく脂肪が分解されます。
脂肪をグリセロールと脂肪酸に分解し、
グリセロールが肝臓でブドウ糖に変換されます。
この1〜4のステップを糖新生と言います。
糖新生
体に最低限必要な血糖値を維持するために
体内のアミノ酸やグリセロールから
ブドウ糖を作り出す肝臓のシステムのこと。
ステップ5:断食後約3日
脂肪を分解してケトン体を作る
脂肪が分解される時、グリセロールと脂肪酸に分かれます。
この時、グリセロールは肝臓でブドウ糖に変換されますが
脂肪酸は肝臓でケトン体に変換されます。
そしてこのケトン体を脳や内臓、
筋肉のエネルギーとして使用します。
このように、我々の体には
食を断っても生命を維持できる仕組みが
何重にも用意されているのです。

ケトン体が脳と体を活性化する

ファスティングを始めて約3日目あたりから
徐々に増え出すケトン体ですが
実はこのケトン体
脳と体を活性化する物凄い生体内物質なのです。
ケトン体は
アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸の総称です。
【ケトン体の効果】
① 空腹をやわらげる
脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され空腹感がなくなります。断食を体験した人からは「2日目くらいまでは空腹が辛かったが、3〜4日目くらいになると空腹感がうそのように消えた」とよく言われます。これは体のエネルギー源が「ケトン体モード」に切り替わることによる変化だと思われます。
② リラックス効果
脳では神経活動によって様々な脳波が出ています。そしてそれらは周波数によっていくつかのグループに分けられています。ファスティング3日目くらいに入ると「脳がスッキリした」「集中力が出てきた」というような感覚を体験する人が多いのですが、これは、脳からα波が出ています。そして、東北大学の研究により、断食中の血液中のケトン体の量と、脳のα波の割合は、正の相関関係を示す事が分かっています。
脳波
アルファー(α)波:集中・リラックス
ベータ(β)波:不安や緊張
ガンマ(γ)波:怒りや興奮
デルタ(δ)波:眠っている、無意識の状態
シータ(θ)波:ウトウト状態
③ 鎮静効果
脳の過剰興奮によって生じる、てんかん発作や症状を抑える手法としても注目されています。
札幌明和病院の研究チームは、断食によって興奮が治るとして、心療内科の治療手段としても有効であるとしています。
④ 幸福感が得られる
ケトン体は脳下垂体から出るβ-エンドルフィンという快感物質の量を増やす事が分かっています。
そのためか、断食中にはおだやかな気持ちになり、幸福感を経験する人は多くいます。β-エンドルフィンには、集中力や思考力、記憶力、創造力と言った脳の機能をアップさせる働きもあります。
⑤ 酸化ストレスから守る
断食を通じて血液中に発生する低濃度のケトン体が、酸化ストレスから細胞を保護するということを、アメリカのブラッドストーン研究所が発見しました。
このように
ファスティングで脳と体を変える鍵は
ケトン体にあると言っても過言ではありません。
僕もファスティングを何度も行っていますが、
「空腹で辛い」「倒れそう」
そのような経験は一度もありません。
むしろ体が軽くなり、爽快な気分になります。
それはファスティングにより
この『ケトン体』がブドウ糖に変わるエネルギー源として
利用されるからなのです。

ファスティングとオートファジー

2016年、細胞のオートファジー機能解明の功が認められ
大隅良典教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
これはファスティングの重要性が
細胞、分子レベルで科学的に立証されたと言えます。
ではいったい
「オートファジー」とはなんなのか?
その概要を説明していきたいと思います。
人間に寿命があるように細胞にも、
また細胞の中にある細胞小器官(ミトコンドリアなど)にも
その命には限りがあります。
劣化した細胞は死に、また新しい細胞が誕生する、
そのような新陳代謝が
体の中で速やかに行われているのです。
そのようにあらかじめDNAに寿命がプロセスされて、
それに従って細胞が死んでいく事を
「アポトーシス」と言います。
これは細胞自体を入れ替えるという働きです。
今回ノーベル賞の対象となった
「オートファジー」は細胞死ではありません。
細胞は生きたまま
細胞内にある劣化した部品、故障した部品、
もしくは不良品などを細胞内で分解し
部品に戻して使える部品は再利用するという仕組みです。
ではファスティングがどのように
オートファジーに関係するのかと言うと
オートファジーは細胞が
飢餓状態に置かれた時に誘発されるのです。
この解明を、
大隈教授はいきた酵母細胞を飢餓状態に置くことにおいて
立証しました。
ちなみにオートファジーはギリシア語で
「オート:自分」「ファゲイン:食べる」
と言う二つの言葉が合わさり
「自食」と言う意味を持っています。
私たちの細胞は飢えると
自らのタンパク質(ミトコンドリアなど)を食べて
飢えをしのぐということ
それも細胞に悪影響をもたらす不良品タンパク質を分解し
不要な部品は尿などで排泄し、使える部品(アミノ酸)は
必要なタンパク質を作るために再利用されていくのです。
オートファジーの役割
① 飢餓ストレスに耐える
② 発生過程で細胞内を大規模に入れ替える
③ 細胞内洗浄化作用
④ 微生物(細菌・ウイルス)分解

サーチュイン遺伝子

2000年
断食の若返り効果を裏付ける研究発表がありました。
その鍵を握っているのが
長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)
マサチューセッツ工科大学の
レオナルド・ガレンテ博士が発見したこの遺伝子は、
寿命をコントロールしており
活性化すると寿命が延びる事が分かったのです。
そして、ガレンテ博士は
少ない食料
が長寿遺伝子をオンにすることを証明しました。
同じく2000年に発表された、
ウィスコンシン・マディソン大学の猿を使った研究では
食べ物を自由に食べさせたグループと
カロリーを70%に抑えた二つのグループを比較させた所
カロリー制限をしたサルの方が
生活習慣病や老年病で死亡する数が3分の1程度で
シワや白髪が少なく若々しかった事が分かっています。
さらに近年では、総カロリーを減らすより
断食でミトコンドリアを増やす方が
長寿遺伝子をオンにするのに
効果的である事が分かっています。

科学が証明したファスティング

このようにファスティングにより
あえて飢餓状態を作り出すことで
ケトン体・オートファジー・サーチュイン遺伝子
このような人間本来に備わっている生体反応を利用し
体の解毒と修復を行ってくれます。
人類の歴史というものは長らく飢餓との戦いでした。
なので人間の体は過食・飽食には慣れていませんが
飢餓には対応出来るよう設計されているのです。
ファスティングのメカニズムが理解できたところで
あなたも一度ファスティングにチャレンジしてみては
いかがでしょうか。
参考文献
・杏林予防医学研究所(杏林アカデミー講義テキスト)
・分子整合医学美容食育協会(検定公式テキスト)
・脳と体が若くなる断食力(山田豊文:青春文庫)
・図解 脳が蘇る断食力(山田豊文:青春出版社)
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